税優遇の内容

税優遇の内容

個人投資家は株式取得時点、株式売却時点のそれぞれの時点において、税制上の優遇措置を受けることができます。

(1)投資した年に受けられる所得税の優遇措置

AとBのいずれかを選択可能

優遇措置A

設立5年未満の企業への投資が対象(注1)
[対象企業への投資額‐2000円]をその年の総所得金額(注2)から控除
※控除対象となる投資額の上限は、総所得金額(注3)×40%と800万円(注4)のいずれか低い方

(注1)基準日(通常、払込期日)が令和2年3月31日以前については設立3年未満
(注2)租税特別措置法上の総所得金額(株式等の譲渡所得等を除きます。)
(注3)当該適用年分の総所得金額(株式等の譲渡所得を含みます。)、退職所得金額及び山林所得金額の合計額
(注4)令和2年12月31日以前の投資額の上限は1000万円

優遇措置Aの仕組み(図解)(詳しくはこちらから)

優遇措置B

設立10年未満の企業への投資が対象
対象企業への投資額全額をその年の他の株式等譲渡益から控除
※控除対象となる投資額の上限なし
※申告分離課税のうち所得税の15%が優遇措置の対象(住民税の5%は対象外)
※他の株式等譲渡益には未上場株式だけでなく上場株式等も含まれます。
他の株式等譲渡益に含まれるものについての詳細はこちらから

優遇措置Bの仕組み(図解)(詳しくはこちらから)

※優遇措置Aの要件はBの要件を含みます。このため優遇措置Aの要件をみたす場合、確定申告の際に個人投資家が優遇措置AとBのどちらか有利な方を選ぶことができます。

(2)株式を売却し損失が発生した場合、受けられる所得税および住民税の優遇措置

対象企業の株式売却により生じた損失を、その年の他の株式等譲渡益と通算(相殺)できます。その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年にわたって順次株式譲渡益と通算(相殺)できます。

※対象企業が上場しないまま、破産、解散等をして株式の価値がなくなった場合にも、同様に翌年以降3年にわたって損失の繰り越しができます。
※対象企業へ投資した年に上記(1)の所得税の優遇措置を受けた場合には、その控除対象金額を取得価格から差し引いて売却損失を計算します。
※平成12年4月1日から平成20年4月30日までに取得した株式に限り、投資した日の翌日から3年を超えて当該株式を保有した後に、その株式を売却したとき(対象企業の株式を上場後に売却した場合は上場の日から3年以内)は、譲渡益を1/2に圧縮して課税します。

売却時の優遇措置の仕組み(図解)(詳しくはこちらから)

税優遇が受けられなくなる場合

次の場合、「全ての個人投資家」はエンジェル税制の優遇措置を受けられませんので、ご留意ください。

1.新設合併や新設分割により設立した会社
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2.子会社の支配・管理のみを行う純粋持株会社
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3.有限責任事業組合(LLP)経由の投資
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4.投資先企業が外国法人の場合
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次の場合、「該当する個人投資家のみ」がエンジェル税制の優遇措置を受けられませんので、ご留意ください。

1.株主が取得した株式を年内に譲渡等をした場合
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2.個人事業主の法人成りにおける個人事業主・その親族・その使用人等
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3.途中加入の組合員
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4.日本で所得税を納税していない場合
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5.税制適格ストック・オプションの特例の適用
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課税の繰り延べになる場合

株式取得時の優遇措置を受け、その後当該株式を譲渡し、株式譲渡益が生ずると課税の繰り延べがなされます。これは、株式取得時の優遇措置を受けた場合には、その控除対象金額を取得価格から差し引いて株式譲渡益を算定するためです。(注)
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(注)所得税と住民税の取得価額の調整(みなし取得費) 株式取得時に関する所得税の優遇措置(A・B)を受け、その後当該株式を売却した場合、株式譲渡益(=売却価格―取得価格))を算定するための取得価格としていかなる金額を用いるかという問題があります。これについては所得税(国税)と住民税(地方税)では取り扱いが異なります。 所得税では、取得価額を調整し、原始取得価格から株式取得時の優遇措置の控除額を減額し、この「みなし取得費」により株式譲渡益を計算します。 一方、株式取得時の優遇措置は所得税だけで住民税は優遇措置の対象外であることから、住民税では、取得価額から控除額を減額することはせず、原始取得価格を用いて株式譲渡益を計算します。 ただし、制度上、所得税の計算においてみなし取得費を用いて株式譲渡益を算定する場合、自動的に住民税の計算においてもみなし取得費を用いて株式譲渡益が算定される仕組みになっているため、個人投資家は、所得税の確定申告の際、「エンジェル税制の優遇措置は所得税だけで住民税は対象外なので、住民税の計算においてはみなし取得費でなく原始取得価格を用いて株式譲渡益を算定してください。」という旨の文を記載した付箋を確定申告書に貼っておくか、もしくは住民税を管轄する区役所や市役所の担当者に直接説明するといった対応をする必要があります。
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税優遇の具体例(令和2年3月31日以前の場合)

(1)投資した年に受けられる所得税の優遇措置の具体例

優遇措置A
設立5年未満の企業への投資

[対象企業への投資額‐2000円]をその年の総所得金額から控除
※控除対象となる投資額の上限は、①総所得金額×40%と②1000万円のいずれか低い方

具体例① 投資家Nさんの場合

総所得額:800万円
企業への投資額:500万円
       ↓
総所得金額から控除できる金額:319.8万円
※320万円‐2000円=319.8万円
× 投資額500万円
○ 限度額①800万円×40%=320万円
× 限度額②1000万円

具体例② 投資家Kさんの場合

総所得額:1200万円
企業への投資額:300万円

総所得金額から控除できる金額:299.8万円
※300万円‐2000円=299.8万円
○ 投資額300万円
× 限度額①1200万円×40%=480万円
× 限度額②1000万円

優遇措置B
設立10年未満の企業への投資

対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除
※控除対象となる投資額の上限なし

具体例③ 投資家Tさんの場合

総所得額:800万円
企業への投資額:500万円
他の株式譲渡益:200万

株式譲渡益から控除できる金額:200万円

具体例④ 投資家Kさんの場合

総所得額:1200万円
企業への投資額:300万円
他の株式譲渡益:350万円

株式譲渡益から控除できる金額:300万円

コラム:優遇措置Aと優遇措置Bはどちらが有利か

 優遇措置Aと優遇措置Bのどちらがお得になるかは、個人投資家の所得額や投資額によって異なりますので、いくつか例を挙げて比較してみます。

 

投資家Xさんの場合

投資家Yさんの場合

総所得金額

12,000,000

8,000,000

企業への投資額

3,000,000

7,000,000

他の株式譲渡益

3,000,000

6,000,000

 

優遇措置A

優遇措置B

優遇措置A

優遇措置B

総所得金額等から控除できる金額

2,998,000

-

3,198,000

-

株式譲渡益から控除できる金額

-

3,000,000

-

6,000,000

エンジェル税制を利用した場合の支払税額(a)

1,884,660

2,424,000

1,432,900

1,204,000

エンジェル税制を利用しない場合の支払税額(b)

2,874,000

2,874,000

2,104,000

2,104,000

(b)-(a)

989,340

450,000

671,100

900,000

判定

優遇措置Aが有利

優遇措置Bが有利

 

投資家Zさんの場合

投資家Wさんの場合

総所得金額

5,000,000

3,000,000

企業への投資額

3,000,000

1,000,000

他の株式譲渡益

2,000,000

1,000,000

 

優遇措置A

優遇措置B

優遇措置A

優遇措置B

総所得金額等から控除できる金額

1,998,000

-

998,000

-

株式譲渡益から控除できる金額

-

2,000,000

-

1,000,000

エンジェル税制を利用した場合の支払税額(a)

502,700

572,500

252,700

202,500

エンジェル税制を利用しない場合の支払税額(b)

872,500

872,500

352,500

352,500

(b)-(a)

369,800

300,000

99,800

150,000

判定

優遇措置Aが有利

優遇措置Bが有利

【算定根拠】

所得税の計算は、平成28年4月1日現在の「所得税の速算表」によります。
株式譲渡の場合の税額は、所得税(15%)で計算しています。

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